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以前より漠然と「小児救急がやりたい」、「専門施設で研修してみたい」という思いがありました。そんな中、飯塚病院小児科に勤務していたときに九州大学病院の小児救命救急センターの賀来先生と出会いました。賀来先生から小児救急や集中治療について教わり、お話しをさせて頂く中で症例数の多い大規模PICUでの研修を勧められました。自分としても行ってみたいという気持ちになり、教授や医局長に相談し、都立PICUの当時の部門長だった清水直樹先生にお願いして国内留学する運びとなりました。一番大変だったのは家族の反対でしたが、粘り強く話して家族全員(一家5人)で東京に行きました。
僕は元々東京医科歯科大学の小児科に所属し、その関連病院に勤務していたので、久留米に来た当初は軽いカルチャーショックを受けました。言葉にするのはちょっと難しいですが、医療自体の大筋は変わらないんですがやり方とか作法が違うみたいな感じです。それは医療に限らずかもしれませんが・・・。
都立のPICUに行ったときは違うカルチャーショックを受けました。ユニット内を流れる空気とか雰囲気は今まであまり経験したことの無いものでした。初めは違和感を覚えましたが徐々に慣れてくると心地よくもあり、充実した研修を送れたと思います。その中で今までの自分を見つめ直すこともできた気がします。
ICU内は管理が非常にシンプルでしたし、医療安全にとても配慮されていました。処置や薬剤、医療機器やモニター、アラーム設定など今までなんとなくやり過ごしてものをひとつひとつ考え直す機会ともなりました。
都立では専門各科と毎朝濃厚なカンファレンスをしていました。それぞれの科の主張や意見をまとめて患者さんを最終的なゴール(目標)まで導くのが集中治療科医の役割のひとつでした。今までの小児科ではそういう経験をしてこなかったので、非常に良いトレーニングになった気がします。
最後に科内に重篤小児に対する使命感みたいなものを非常に感じました。それらを感じることができただけでも留学して良かったと思います。
ある先生が言ってましたが、「人生は細かい選択の連続」だそうです。この道を右に行くか、左に行くか、そうやって細かい選択を繰り返しているうちに気づいたときにはある程度の場所まで進んでいるのではないでしょうか。やりたい事がある人はやりたい事ができるようにその場所を目指して頑張れば良いし、やりたい事が見つからない人はまず目の前の事をじっくり取り組んでみるのが良いかなと思います。右に行くか左に行くか、目の前の景色を楽しんでみてください。久留米大学小児科はそれをサポートしてくれますよ、たぶん。
私の専門分野である胎児心臓病をもう少し深く学んでみたいと思うようになりました。指導していただいた先生方は海外留学経験があり、そのつながりから留学先を紹介していただくことができました。
家族で約2年間のカナダ生活でしたが、こども達は学校で様々な世界の人達と出会い多様な価値観に触れる機会がありました。また妻も大学の施設で研究の手伝いをする機会をいただき、充実した生活を送ることができました。家族と海外で過ごすことでつながりのあるコミュニティーが大きく広がったと思います。
多くの出会いがあり様々なサポートをしていただきなんとか2年間の留学をすることができました。臨床から少し距離ができたため家族と過ごす時間も増えこれまでとは違った時間でした。英語はもちろん苦労しましたが、そのほか自動車免許書き換えなどの行政の手続きや脆弱な郵便事情などは大変でした。
世界的に著名な研究者の実際の現場を体験することができ、その施設を肌で感じることができました。世界各国から集まった活気のある若手医師たちの現状もみることができ、初めて行う動物実験の研究も最初から終わりまで完遂することができました。この経験を通して、これまでの日常の臨床とはまた違った視点からみることができるようなるのではないかと思います。
留学の機会があれば国内でも国外でも是非挑戦してみてください。そのチャンスはもう二度と来ないかもしれません。きっとこれまで体験したことのない違う世界をみることができると思います。